「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」(一時保護解除チェックリスト)について
「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」とは
厚生労働省が2008年に作成したものですが、現在のこども家庭庁も、一時保護の解除の際は「『家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト』等を活用し、客観性を担保することが必要」としていて(下記注1)、現役で使用されています。
このチェックリストはインターネット上で一般に公開されており、誰でも見ることができます。各チェック項目について「▶ 家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト 記入上の着眼点」にさらに詳しい説明があります。
「家庭復帰チェックリスト」は一時保護解除のためにすべきことの「答え」
児相職員の仕事は「家庭復帰チェックリスト」を埋めること
児相職員は保護者にさまざまな質問や指導をしますが、それは「家庭復帰チェックリスト」を埋めるためです。
児相職員は、「家庭復帰チェックリスト」の各項目について、現在の状況を知るために、保護者に質問をします。その結果、現在の状況が家庭復帰の基準をクリアしていない場合、クリアするために保護者に指導をします。
例えば、「家庭復帰チェックリスト」の「16 親族との関係(親族から必要なときに援助を得られる)」を埋めるために、「近所に親族はいますか?その親族との関係は良好ですか?」という質問で現在の状況を確認します。もし「親族が近所にいるが、仲が悪い」と答えた場合、児相職員は、「何かあった時のために関係性を改善しておくことはできますか?」という質問、または「関係性を改善してください」という指導をしてきます。この質問(指導)に対して、「わかりました、何かあった時に頼れるように挨拶をしてきます」と答えるか、「いや、ずっと前から仲が悪いので無理です」と答えるかによって、「16 親族との関係」が「はい」と「いいえ」のどちらになるか、変わるのです。
児相職員は、このようにして「家庭復帰チェックリスト」の各項目を埋めていきます。全部埋まったら、一時保護を解除するかどうかを判断します。「お役所仕事」という言葉がありますが、まさにそういうものだと思っておくべきです。(良い担当者にあたれば、「家庭復帰チェックリスト」をクリアするために丁寧な指導を受けられるかも知れません。しかしそのような幸運を期待することはできません。)
保護者がすべきことは「家庭復帰チェックリスト」をクリアすること
児相職員との面接では、「自分がテストされている」という意識を持ち、落ち着いて対応してください。「家庭復帰チェックリスト」ができるかぎりたくさんの「はい」で埋まるよう心がけます。
重要なチェック項目「9 虐待の事実を認めている」
本当に虐待をしているなら、保護者がそれを自覚しているかどうかは、当然に重要なポイントになります。しかしこのチェック項目は重大な問題を含んでいます。「そもそも保護者は虐待をしていない」という選択肢がないのです。「家庭復帰チェックリスト」は、保護者が虐待をしているという前提で作られています。そのため児相職員は、保護者が何もしなくても、「保護者が虐待をしている」という話をしてきます。これは「家庭復帰チェックリスト」のこの項目を埋めるため、という側面があります。
このとき児相職員は、一般的な感覚では到底虐待とは思えないことを虐待だと言ってくることがあります。例えば「宿題をしたくない子供に宿題をやらせるのは虐待です」と言われます(実話です)。ここで「宿題をしないと学校で子供が叱られる。宿題をさせるのは必要なこと。どの家でも宿題はやらせている。虐待ではない。なぜうちだけそれを虐待だと言われるのか」等と反論すると、「家庭復帰チェックリスト」に「保護者が虐待の事実を認めない」と書かれ、子供の家庭復帰が遠のいてしまう可能性があります。馬鹿げた話ですが、これが現実に児童相談所で起きていることです。
児相職員のいうことに納得ができなくても、子供を取り戻すために、落ち着いて対応してください。
重要なチェック項目「14 関係機関への援助関係構築の意思」
子供の強制的な一時保護は、保護者からすれば「国家による拉致」です。子供が一時保護され、それまで当然に出来ていた親子の交流が突然に禁止され、人権を侵害されている状況で、「児童相談所と良好な相談関係を持つ」というのは、心情的には、とても難しいことです。それでも、子供を取り戻すために、このチェック項目をクリアする必要があります。
保護者から児相職員に、「困った時には児童相談所に相談する、児童相談所からの指導には極力従う」という意思を伝え、このチェック項目を「はい」にします。児童相談所と敵対してしまうと、この項目が「いいえ」となってしまい、子供の家庭復帰が遠のいてしまいます。
最後に
注2:「家庭復帰適否判断のためのチェックリストの有用性に関する実証的研究」の28頁の表16等を参照。
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