一時保護を解除する方法

児童相談所の強大な権限について


 児童相談所(以下「児相」)とはどのような組織で、どのような権限があるのかを学びます。相手のことを知らないとうまく立ち回ることができませんから、まず相手を知ることから始めます。

児童相談所は「児童福祉法」に基づいています
 児相は「児童福祉法」によって規定された行政機関です。ブラウザで「 児童福祉法」のページを開き、ページ内を「児童相談所」で検索すると100件前後ヒットします。ヒットしたところを一通り読んでみると、児相がどんなところなのか分かります。それら条文のうち児相の権限についての規定を以下で解説します。

一時保護の開始についての権限
 児童相談所長は、「必要があると認める」ときに、一時保護を行うことができます(児童福祉法33条1項)。一時保護の目的は、「児童の安全を迅速に確保」または「状況を把握」です()。「必要があると認める」との文言ですが、具体的にどのようなときに一時保護の必要があるかは、条文には書かれておらず、その判断は児相に任されています。この児童福祉法33条の規定により、児相は、「状況を把握する必要がある」という理由だけで、一時保護を行うことができます。

 まず驚くのは、一時保護を行う要件に、虐待の有無が関係ないことです。「状況を把握する必要がある」という説明だけで一時保護が行われ、強制的に子供が連れ去られ、その日から保護者と子供の交流の自由がなくなります。一時保護中に誕生日やクリスマス、お正月等があっても、家族が一緒に過ごすことはできません。自分の子供が一時保護されると、日本という国に対する見方が変わるほどの衝撃を受けます。家族の交流というごく当たり前のことが禁止されます。法律や憲法のことをよく知らなくても「人権を侵害されている」と強く感じます。しかし現実に、法律によって認められている以上、「勝手に一時保護された」「親子が強制的に引き離された」ということについて、これを不当であるとどんなに訴えても、どこに訴えても、児相が「不当だった」と認めて子供が帰ってくるということは、ありません。

 児相の強大な権限で行われる一時保護に対して、保護者ができることはなにもありません。


一時保護の期間についての権限
 一時保護の期間は2ヶ月を超えてはならないと定められています(児童福祉法33条3項)。ただし、児童相談所長が「必要があると認める」と、延長が可能です(同4項)。ここでも、児相に判断が任されています。児相が「引き続き調査が必要である」というだけで、一時保護は延長できてしまうのです。

 保護者が一時保護の延長に同意しない場合は、児相は家庭裁判所の承認を得なければなりませんが(同5項)、家庭裁判所は基本的に延長を認めてしまいます。なぜなら、児童福祉法で「児童相談所長が必要があると認めると延長できる」と規定されているからです。家庭裁判所は、児童相談所長の判断を尊重するのです。

 家庭裁判所に延長が認められると、一時保護の期間が2ヶ月延長されます。

 さらに、延長された2ヶ月が経過したとき、児相が「必要があると認める」ときは、何度でも延長ができます。

 児相の強大な権限で行われる一時保護の延長に対して、保護者ができることはほとんどなにもありません。一時保護は待っていれば自然に解除されるというものではありませんから、保護者が解除に向けて積極的に動く必要があります。


一時保護後の措置についての権限
 児相は必要があると認めるときに一時保護を行うことができますが、それは「必要があると認めた措置(そち)を採るに至るまでの間」と定められています(児童福祉法33条1項26条1項要約)。

 児相は、一時保護をすると、措置をせずに一時保護を解除するか、措置をするか、の判断をします。措置をする基準ですが、条文には「必要があると認めた」と書かれているだけですから、ここでもその判断はすべて児相に任されています。

 一時保護後に行われる措置の主な内容は次のとおりです(同法27条1項抜粋要約)。

  1. 児童又はその保護者に訓戒を加え、又は誓約書を提出させる。
  2. 児童又はその保護者を児相等に通わせ、児童福祉司に指導させる。
  3. 児童を里親に委託、または、乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設等に入所させる。

 前記1(誓約書の提出)は、「1号措置」などと呼ばれます。一時保護を解除する条件として、保護者に書面でなんらかの約束をさせるという形になります。

 前記2(通所させて指導する)は、「2号措置」「児童福祉司措置」などと呼ばれます。一時保護を解除する条件として、一時保護解除後に保護者が児相に通って、児相からの指導を受けるという形になります。

 前記3(施設入所)は、「3号措置」などと呼ばれます。3号措置になると、親子が年単位の長期間、引き離されることになります。子供を自宅に戻すためには、3号措置となることを全力で避けなければなりません。

 1号措置2号措置は共に、保護者が児相の指導に従うことが前提になっています。保護者が児相の指導に従わないと、児相は3号措置(施設入所)をとる可能性が高くなります。児相からの指導に従います、ということを明確に伝えることで、3号措置を避けて一時保護解除に近づくことが、これらの措置の種類からも理解できます。

 児相の強大な権限で行われるこれらの措置(特に3号措置)に対して、保護者が対抗することは容易ではありません。


まとめ:児童相談所の権限が強大であること
 ここまで見てきたように、児相による一時保護は、その開始、延長、一時保護解除(または措置)まで、その判断はすべて児相に任されています。

 一時保護の延長と施設入所については、家庭裁判所の承認を必要とします。つまりそこで司法の判断が挟まるわけですが、児童福祉法によって児相に大きな裁量権が与えられているため、児相が「必要があると認めた」ことを家庭裁判所が否定して判断を覆すことはほとんど期待できません。

 ですから、児相の不当な対応について家庭裁判所で争う、という姿勢ではなく、児相が「施設入所が必要」と判断しないように(3号措置にならないように)、保護者は十分に慎重に対応を進めていく必要があります。

 (しかしもし家庭裁判所で争うことになっても諦めないでください。絶対に勝てないわけではなく、家庭裁判所の審判で子供を取り返した事例も存在します。)


補足:権限を持っている人について
 ここまで「児相の権限」という表現をしましたが、児童福祉法で定められている児相の強大な権限は、児童相談所長に対して与えられています。実際の業務では、児童福祉司から上司(係長・課長等)への報告に基づいて、その上司が判断を行い、児童相談所長がそれを認める、という流れとなっています。

 一時保護されると、担当の「児童福祉司」がつきます。その児童福祉司が上司にどのように報告するかで、その後の動きが大きく左右されます。一時保護解除のためには、まず最初に、児童福祉司に、一時保護を解除しても大丈夫、と思わせなければなりません。一時保護になると、何度も児相に足を運んで、何度も児童福祉司と面接をすることになりますが、その1回1回の面接を丁寧に、慎重に運ぶ必要があります。


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