一時保護を解除する方法

保護者の「相談し、調査・判定・指導を受ける」権利(児童福祉法)


 児相職員の指導に従っても一時保護が解除されない場合や、受け入れるのが困難な指導をされる場合は、一時保護解除への道を探りつつ、児童相談所と闘うことも想定して準備を進める必要があります。児童相談所と闘うために、児童相談所の法的義務、保護者の法的権利の知識が必要です。

 児童福祉法には、児童相談所が行うべき業務が法的義務として規定されています。児童相談所の法的な「義務」は、裏返すと保護者の「権利」となります。保護者が自らの権利を正しく行使することで、児童相談所に対して法的義務の履行を求めることができます。

児童相談所の法的義務と保護者の権利
 児童相談所は、児童の福祉に関する業務を行うことが定められています。その主な内容として、次の業務が定められています(児童福祉法12条3項同法11条1項2号ロ、ハ、ニ)。

  • 児童に関する家庭その他からの相談のうち、専門的な知識及び技術を必要とするものに応ずること。
  • 児童及びその家庭につき、必要な調査並びに医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定を行うこと。
  • 児童及びその保護者につき、調査又は判定に基づいて心理又は児童の健康及び心身の発達に関する専門的な知識及び技術を必要とする指導その他必要な指導を行うこと。

 簡単にいえば、児童相談所には「保護者からの相談に応じる」「必要な調査をする」「各判定を行う」「保護者や児童に必要な指導を行う」という業務が児童福祉法で定められています。これは、児童相談所にはこれらを行う法的義務があることを意味しています。児童福祉法では、児童相談所に、その名前のとおり「相談所」としての機能を規定しているのです。そしてこれらの規定により、保護者には、「相談する」「必要な調査をしてもらえる」「各種の判定をしてもらえる」「必要な指導を受ける」という法的権利が与えられています。

 これらは、子供が一時保護された保護者が持つ、数少ない、大切な権利です。


相談の窓口は「児童福祉司」
 子供が一時保護になると担当の「児童福祉司」がつきます。児童福祉司の役割は児童福祉法で定められていますので解説します。

 ですから子供が一時保護された保護者が「相談」をするとき、その相談窓口は、原則として担当の児童福祉司となります。その後の「調査」や「指導」も児童福祉司が中心となって行います。「判定」については、「医学的、心理学的、教育学的、社会学的及び精神保健上の判定」(同法11条1項2号ハ)のうち、「社会学的判定」を児童福祉司が行うことになっています(児童相談所運営指針より)。このように児童相談所では児童福祉司が重要な役割を担っています。

 (なお児童福祉司になるにはいくつか要件がありますが、特別な試験等があるわけではありません。児童福祉司は児童に関する相談を受ける専門家などではなく、普通の公務員という程度に考えておくべきです。)


保護者が「相談する」権利を行使するタイミング
 一時保護になったあと、児童相談所からは保護者に「指導」が行われます。その指導は、保護者からの相談に応じて行われたものではなく、児童相談所が考えた一方的なストーリー(「虐待親矯正ストーリー」とでもいうべきものです)に基づいて行われています。

 その指導が適切なものであれば、保護者はその指導に素直に従うのが正しい対応であり、それが一時保護を解除する最短ルートになるはずです。指導が保護者の考えとは異なるものであったり、不当と思えるものであっても、児童相談所の強力な権限を考えると、指導には逆らわず、できるかぎり従う必要があることはこれまで繰り返し説明してきました。

 しかし、そもそも「指導」がないことがあります。児童相談所から放置されて面接が行われなかったり、面接があっても「どうしたらいいのか、自分で考えてください」等、なにも具体的な指導が行われないケースです。また、「子供は施設に入れるのがいい」等、保護者が絶対に従うことができない指導をされることがあります。そのようなときは、状況を打開するために、保護者から「相談」をする、という方法があります。児童相談所からの出鱈目な指導を、本来あるべき適切な指導へと誘導するのです。

 保護者から「相談する」ことで、児童相談所には「相談に応じて調査、判定、指導する」という法的義務が生じます。これは法律で規定された義務ですから、児童相談所は法律に従って、保護者からの相談に応じなければなりません。「相談する」という権利を適切に行使することで、膠着した状況を打開できる可能性があります。(児童相談所がこの法的義務に違反すると、保護者の法的権利を侵害し、保護者に損害を与えることになります。もし児童相談所が保護者からの相談に応じなかった場合、その法的義務違反を違法であるとして、国家賠償請求訴訟を提起することが可能です。)


「相談」は慎重に確実に行う必要があります
 実際に「相談」するときには慎重に行わなければなりません。相談に応じるのが児童相談所の法的義務である、といっても、担当の児童福祉司が「相談に応じる」という児童相談所の法的義務を知らず、保護者からの相談内容を一切記録に残さず、相談そのものがなかったことにされてしまうケースがあります。相談が正しく受け付けられても、児童相談所がろくに調査せず、出鱈目な判定、指導をしてくる可能性もあります。そのため、相談をするときは、相談をしたこと、その相談内容を記録に残し、証拠を確保しておく必要があります。

 保護者から児童相談所に「相談」をしたという事実は、児童相談所に子供を施設入所させる審判(28条審判)を起こされたときの対策にもなります。そのためにも証拠が必要です。

 「相談する」についての具体的な手順等について別途ご説明します。


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