一時保護を解除する方法

児相と敵対すると親子断絶される理由21


 児相と敵対するのは、親子断絶に至る危険な行為です。「親子断絶」とは、親には子供がどこにいるのかも知らされず、会うことができない、電話で話すことも、手紙の交換すらできないという、本当の意味での「断絶」です。

 当団体が把握しているものでは、「児相と敵対し、指導を拒否した結果、9歳のときに一時保護された息子と、一度の親子の面会も行われないまま、子供が成人するまでの9年間、親子断絶された」という事例があります。

 児相と敵対すると、そのような、想像もできないような恐ろしい未来が現実のことになりかねません。

 なぜそのようなことが起きるのか、その理由を以下に説明します。

理由1.児相が強大な権限を持っていること
 児相は、一時保護の開始/延長/解除や、施設入所措置等の開始/延長/解除について、独断で自由に決定できる強大な権限を持っています。(「児童相談所の強大な権限について」をご参照ください。)

 児相と敵対し指導を拒否すると、親が不利な決定をされる可能性が高まります。


理由2.家庭復帰するには「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」をクリアする必要があること
 児相は、一時保護の解除に「 家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」または類似する独自のチェックリストを使います。

 児相から保護者への指導は、基本的に、このチェックリストの各項目を「はい」にするために行われています。このチェックリストをクリアするために、児相の指導に従って「はい」を増やす必要があります。

 児相と敵対し指導に従わないと、チェックリストに「いいえ」が増えます。「はい」が増えず「いいえ」が増えていくと、家庭復帰ができず、施設入所となってしまいます。

 なお極端な例として、親が児相職員との面接さえ拒否する状況では、このチェックリストのチェックそのものができないことから、家庭復帰ができないことになります。


理由3.一時保護後の家庭復帰の措置は保護者が指導に従うことが前提となっていること
 一時保護後の措置には主に、1号措置(誓約書を提出させる)、2号措置(通所させ指導する)、3号措置(児童を施設入所させる)があります(児童福祉法27条1項)。

 このうち1号措置(誓約書)と2号措置(通所指導)は、保護者が児相の指導に従うことが前提となっています。保護者が児相に敵対し指導に従わない場合、1号措置2号措置は効果がないので児相はこれらを選べません。

 つまり、児相がどの措置をとるかという観点から考えると、児相に敵対して指導を拒否した場合、ほとんど自動的に3号措置(施設入所)になってしまいます。

 児童福祉法も、保護者が指導に従わないなら子供を家庭に戻さないという方針であることがわかります。


理由4.指導に従わないと「虐待の恐れがある」と判断されてしまうこと
 児相からの指導は「虐待を防ぐため」に行われているため、保護者が児相と敵対して指導に従わないと、児相に「虐待の恐れがある(虐待の恐れを解消できない)」と判断されてしまいます。

 特に「保護者の虐待により一時保護した」と児相が考えている状況では、保護者が児相の指導に従わないと、児相は「今後も虐待の恐れがある」と決めつけて「子供を家庭に戻せない」と判断します。その状態が解消されなければ、そのまま施設入所となってしまいます。

 児相は「保護者が指導に従わない」ということだけで子供を一時保護することができますし、そのまま「家庭に戻すと虐待の恐れがある」という理由で子供を施設入所させることができてしまいます。それを家庭裁判所が認めてしまうという現実があります。


理由5.家庭裁判所も児相の指導に従うことを保護者に求めること
 児相が保護者の意思に反して子供を施設入所させるために起こす審判(28条審判)では、家庭裁判所も、児相と同様に、保護者に児相の指導に従うよう求めてきます。

 28条審判において裁判官が「施設入所の必要性を認めない」と明言している状況であっても、家裁調査官の調査報告書では次のように明確に、保護者に児相の指導に従うことを求め、指導に従わないなら施設入所が妥当である、という意見が述べられます(実話です)。

 『家庭引取りを相当とするための最低限の条件として,父母が児童相談所との連携を継続し,その助言指導に従うことが必須である。父母が児童相談所の助言指導に従う見通しが得られない場合は,本件を承認する(子供を施設に入れる)ことが相当である。』

 家庭裁判所も「児相の指導は正しい、指導に従わない保護者の態度が問題である」と考えており、「保護者が指導に従わないなら子供を施設に入れる」という方針で動いています。保護者が児相の指導に従わないなら、それを理由に、子供の施設入所が認められてしまいます。


理由6.「家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」の「14 関係機関への援助」が重視されていること
 子供を家庭復帰させるには「 家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」をクリアする必要があります(理由2でも書きました)。 このチェックリストは20個の項目からなりますが、14番目に次の項目があります。

14 関係機関への援助関係構築の意思
児童相談所や地域の関係機関と良好な相談関係が持て、適宜必要な援助が求められる

 「 家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト 記入上の着眼点」によると、この項目は次のように解説されています。

・保護者から児童相談所に連絡してくるなど、関係機関と保護者が支援関係を築けているか
・虐待再発の危険を保護者が認識したとき、すぐSOSを出す意志があるか
・施設職員、里親との信頼関係があり必要なとき適切な相談ができるか

 このようにこの項目は、保護者が児相に対して敵対せず児相の指導を受ける意思があるかどうかをチェックするもので、それができるときに「はい」、できないときに「いいえ」となります。

 このチェックリストの実際の運用状況を調査した論文「保護者援助ガイドラインおよび家庭復帰適否判断のためのチェックリストの有用性に関する実証的研究」によると、このチェック項目「14 関係機関への援助関係構築の意思」は、保護者に関するチェック項目の中で、家庭復帰の判断にあたり「2番目に重視されている」という結果が出ています。(なお1番重視されるのは「9 虐待の事実を認めていること」だそうです。)

 保護者が児相に敵対して指導を拒否すれば家庭復帰が遠のき、そのまま施設入所となってしまう危険があることが分かります。

  保護者援助ガイドラインおよび家庭復帰適否判断のためのチェックリストの有用性に関する実証的研究


理由7. 「在宅援助の条件」に「児童相談所の指導に従う」があること
 一時保護や施設入所が解除されても児相との関わりはなくなりません。子供が家庭に戻ったあとに児相が家庭に関わることを、児相側の言葉で「在宅援助」といいます。

 かつて厚生労働省が作成し現在はこども家庭庁に引き継がれている「子ども虐待対応の手引き」の「第9章 在宅における援助をどう行うか」に、「在宅援助の条件」が記載されています。その一部をそのまま引用します。

 『⑤ 保護者が市区町村、児童相談所の指導に従う意思を示し、定期的に相談機関に出向くか、 民生・児童委員(主任児童委員)、家庭相談員、保健師、福祉事務所職員、市区町村職員、 児童相談所職員等の、援助機関の訪問を受け入れる姿勢がある。』

 要約すると「保護者が児相の指導に従う意思を示し、児相に通所するか、家庭訪問を受け入れる」です。このように「在宅援助の条件」に「保護者が児相の指導に従う」がはっきりと明記されているのです。

 ですから児相に敵対し指導を拒否すると、「在宅援助の条件」を満たさないことから、「在宅援助」に移行することができず、一時保護や施設入所は解除されないことになります。

 一時保護の場合、解除されなければ施設入所になってしまいます。

  子ども虐待対応の手引き 第9章 在宅における援助をどう行うか


理由8.「敵対しても従っても変わらない」なら「人質児相」が成立しないこと
 「人質児相」という言葉があります。子供を一時保護しておき、虐待を認めなければ子供を返さない、などと言って児相が保護者に虐待を認めるよう迫ることをいいます。 広い意味では、「〜しないと子供を返さない」という児相から保護者への圧力すべてを指します。

 この「人質児相」は、「親が指導に従えば、子供を帰す」「親が指導を拒否したら、子供を帰さない」という、児相が持つ強大な権限とその行使が前提となっています。そうでなければ、「人質児相」は成立しません。

 もし「児相に敵対しても指導に従っても、児相の対応は変わらない」なら、「人質児相」という問題はそもそも存在しません。「人質児相」という問題が存在することは、親が児相の指導に従うかどうかで児相がその後の対応を変えるという、証拠になります。

 「児相に敵対しても指導に従っても変わらない」と主張している人は「人質児相」の存在を否定していることになりますが、「人質児相」は事実として認知されていますから、この主張は誤りです。


理由9.家庭復帰の際は親への指導の効果を考慮すると法律で定められていること
 児童虐待防止法13条「施設入所等の措置の解除等」に、子供の家庭復帰の条件が書かれています。要約すると、施設入所措置を解除するときは、①児童福祉司等の意見、 ②「当該児童の保護者に対し採られた当該指導の効果」、③虐待再発防止の効果、④家庭環境等、を勘案しなければならないと定められています。

 この法律の規定により、児相には、措置解除の際に「親への指導の効果」を考慮するという法的義務が課されています。

 子供の家庭復帰にあたっては、親が児相の指導に従う姿勢を持っているかどうか、指導の効果があったかどうかが重要であることが、この法律からも分かります。親が指導に従わないなら返さないというのは、児相の方針というよりも、日本という国が定めた方針です。それが法律の条文にも書かれていますから、裁判所もこの方針で判断することになります。

 親が児相と敵対し指導に応じていない場合、指導の効果があるといえないため、この法律に基づき、措置が解除されず、家庭復帰できない可能性が高くなってしまいます。

  児童虐待防止法13条


理由10.児相との対立関係が続くと親権制限まであり得ること
 厚生労働省が作成し現在はこども家庭庁に引き継がれている「子ども虐待対応の手引き」の「第6章 診断・判定及び援助方針の決定をどのように行うか」に、「⑤ 拒絶が継続し手がかりが見つからない場合の対応」として、 次の記載があります。

 『保護者が虐待の事実と向き合わず、指導・援助に乗らず、児童相談所との「対立関係」が最後まで続くような場合は、子どもの最善の利益を守るという視点から、28条審判申立てや親権制限の審判請求を行う。』

 現在の法運用では、児相と敵対し指導を拒否すると28条審判を申立てられ、子供を施設に入所させられてしまう危険がありますが、ここではさらに、「親権制限の審判請求を行う」とまで書かれています。

 「親権制限」には「親権停止」や「親権喪失」等がありますが、これをされると「親」ではなくなってしまいます。保護者に対する最も厳しい措置といえます。

 児相の指導を拒否し続ける保護者に対しては、「親」であるという権利さえ奪うというのが、国の方針です。

  子ども虐待対応の手引き 第6章 診断・判定及び援助方針の決定をどのように行うか


理由11.親が指導を拒否すると一時保護や施設入所の法的根拠にされてしまうこと
 児童虐待防止法11条「児童虐待を行った保護者に対する指導等」に、保護者に指導を受けさせる措置についての規定があります。 児相は保護者に指導を受けさせるために「児童福祉司指導措置」を採ることができますが(児童福祉法27条1項2号)、この措置をしても保護者が指導を受けない場合について、次の規定があります(児童虐待防止法11条5項)。

 『保護者が当該勧告に従わない場合において必要があると認めるときは、児童福祉法第三十三条第二項の規定により児童相談所長をして児童虐待を受けた児童の一時保護を行わせ、又は適当な者に当該一時保護を行うことを委託させ、同法第二十七条第一項第三号又は第二十八条第一項の規定による措置を採る等の必要な措置を講ずるものとする。』

 要約すると「保護者が指導を受けない場合は子供を一時保護し、さらに28条審判を経て施設入所させる」という規定です。このように、保護者が指導に応じない場合は、子供を一時保護および施設入所させることが法律で定められています。

 他の法律もそうですが、日本という国の法律は、一貫して、「保護者が指導を拒否するなら一時保護」「保護者が指導を拒否するなら家庭復帰させずに施設入所」という方針で作られています。児相の指導を拒否することは、児相に「一時保護・施設入所の法的根拠」を与えることになり、非常に危険です。

  児童虐待防止法11条


理由12.28条審判の申立書に「保護者が指導に従わない」と書くことになっていること
 かつて厚生労働省が作成し現在はこども家庭庁に引き継がれている文書「児童相談所運営指針」に、子供を施設入所させるときに用いる28条審判の申立書のひな形が載っています(PDFの276ページ)。 その「申立ての理由」は次のとおりです(一部省略)。

第1 事案の概要
第2 当事者
第3 事実経過
第4 保護者による児童の福祉を侵害する行為等
第5 保護者の態度等
 * 保護者の弁解の内容と、これを排斥する事情
第6 保護者指導の経過
 * 保護者が指導に従わないこと、指導ができる状況にないこと
第7 親子分離の相当性
第8 保護者の意に反すること
第9 まとめ

 「第6 保護者指導の経過」に「保護者が指導に従わないこと、指導ができる状況にないこと」とあります。ここから2つのことが読み取れます。①28条審判に至るケースは基本的に「保護者が指導に従わず、指導ができる状況にない」ケースであること(そのためひな形にこの記載がある)、②「保護者が指導に従わないこと」が子供を施設入所させる根拠になること(そのことを裁判官に伝えることで児相が有利になる)です。

 ここまで説明したとおり、日本の法律は「保護者が指導に従わなければ施設入所」という方針で作られていますから、28条審判では「保護者が指導に従わないこと」を「施設入所させる根拠」とすることが、最初から決められているのです。

 このように、児相では親が指導に従わない場合の対応方法が28条審判まで(その後についても)マニュアル化されています。児相と敵対し指導を拒否すると、28条審判まで進みその後も帰宅復帰させないという「マニュアル通りの既定路線」になる危険があります。

 なお上記「第5 保護者の態度等」には「保護者の弁解の内容」とあります。児相の指導に対して反論すると、28条審判児相はそれを「弁解」と呼び、保護者に不利な情報として使おうとします。

  児童相談所運営指針(令和6年3月30日版)


理由13.「援助ガイドライン」に「指導を受ける意識や態度に変化がない場合は一時保護、28条措置」と記載されていること
 厚生労働省が2008年に作成した「児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン」という文書があります。 この文書は「 家庭復帰の適否を判断するためのチェックリスト」と同時期に作成されています。古い文書ですが、家庭復帰チェックリストが現在も使用されているのと同じように、この文書も現在のこども家庭庁でも使われています。

 この文書では、理由11で説明した「児童虐待防止法11条」の規定に基づき、次のような児相の運用が定められています(一部省略)。

 『保護者に指導を受ける意識や態度に変化がないと判断される場合には、一時保護を行った上で、28条措置の申立てを行う。』

 児相の運用を定めた文書(児相の運用マニュアル)は複数ありますが、このように児相の運用マニュアルは児童福祉法や児童虐待防止法の規定に基づいて「指導に従わないなら一時保護、施設入所」という方針で作られています。まず法律があり、それに基づいて運用マニュアルが作成され、それに基づいて児相職員が動きます。それが現在の児相の運用であり、この「指導に従わないなら一時保護、施設入所」という法律ベースの流れに乗ってしまうと、救済手段はほとんどなにもありません。安易に児相と敵対し指導を拒否するのは危険です。

 なお上記の運用は「児童福祉司指導措置等に保護者が応じない場合」とされていますが、実際には、児相児童福祉司指導措置(以下「指導措置」といいます)を採らずに保護者を指導します。一時保護や施設入所の前に指導措置があるなら、指導措置されてから態度を改めれば間に合いそうに思いますがそれは誤りです。児相はもともと指導措置を採らずにいきなり一時保護やその後の施設入所ができる権限を持っています。指導措置は行政処分であるため不服申立等ができ対応にコストがかかる、児童福祉審議会の意見を聞くという規定があるためコストがかかる、要するに手間がかかるので、児相は指導措置を採らずに動きます。ここに挙げた内容はガイドラインに過ぎず、実際の運用はこのガイドラインの「考え方」に沿って行われています。児童虐待防止法11条も一時保護や施設入所の要件ではありませんので注意してください。

  児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン


理由14.親が指導に乗らないと市区町村から児相に送致されること
 子供の養育に関する指導に従わないと危険なのは、児相に対してだけではありません。厚生労働省が作成し現在はこども家庭庁に引き継がれている「子ども虐待対応の手引き」の「第3章 通告・相談の受理はどうするか」に、 市区町村から児相に送致されるケースについて次の記載があります(一部省略)。

 『保護者が虐待を認めない、市区町村による援助や指導に乗らない、長期に渡り改善が見られない場合などのほか、行政処分として誓約書を出させる等の強い指導を行う必要がある場合、……児童相談所と協議の上、必要に応じて送致する。』

 保護者が指導に応じるか否かは、児相が介入する前から、行政側のその後の対応に影響を与える重要な要素になっています。保護者が児相以外の行政機関からの指導を拒否し続けると、児相が介入してきます。児相の介入=一時保護という可能性もあります。児相が介入してくる前に問題を解決できるなら、解決した方が安全です。

 「子ども虐待対応の手引き」では、「指導に応じないなら児相が介入→指導に応じないなら一時保護・施設入所・面会通信制限→子供は成人するまで施設入所」という一連の恐ろしい流れがマニュアル化されています。

  子ども虐待対応の手引き 第3章 通告・相談の受理はどうするか


理由15.「面会の適否の判断材料」に「指導の諾否」等が明記されていること
 厚生労働省が作成しこども家庭庁に引き継がれている「子ども虐待対応の手引き」の「第5章 一時保護」に、「一時保護中に保護者が面会を希望する場合の対応」について記載があります。 その中で、「面会の適否の判断材料」として、保護者についての判断基準が次のように明記されています。

② 保護者側の評価
以下のことに留意する必要がある。
ア. 児童福祉司児童心理司との信頼関係の有無
イ. 面会の回数、制限の範囲等の説明の理解度
ウ. 虐待行為の認否、児童相談所指導の諾否
エ. 子どもとの関わりについての葛藤や不安の有無
オ. 強引な面会要求、引取要求の有無
力. 精神的不安定の有無(飲酒・酩酊状態含む)

 「ア」に「(児相職員との)信頼関係の有無」とあります。保護者が児相と敵対していれば、児相職員と信頼関係に問題が生じ、この項目はマイナス評価されてしまいます。

 「イ」に「面会の回数、制限の範囲等の説明の理解度」とあります。これは、児相が決めた面会の頻度や、面会時の制限(ルール)に保護者が理解を示すかどうかということです。児相が決めたルールに反発すると、「理解していない」などという一方的な言葉でマイナス評価されてしまいます。

 「ウ」に「虐待行為の認否、児童相談所指導の諾否」とあります。「諾否」とは「承諾するかしないか」です。児相に敵対して指導を拒否すると、この項目はマイナス評価されてしまいます。

 「オ」は、児相と敵対して「子供と会わせろ」等と強く求めると、マイナス評価にされてしまいます。

 このように、児相の運用マニュアルによって、保護者が児相と敵対し指導を拒否すると、子供との面会が許可されない可能性が高くなってしまいます。

 実際、保護者が児相と敵対することを選択した結果、何年間も一度も面会が許可されなかったという事例が多く存在しています。子供が18歳になって児相から解放されるまで一度も面会できなかった事例もあります。

 日本の機関であるこども家庭庁は、このように「指導に従わない保護者は子供と会わせない」という方針の運用マニュアルを作り、児相に配布しています。児相では現にこのような運用が行われており、これに対抗する手段はほとんどありません。保護者はこれらのことを充分に理解したうえで、冷静に判断し行動する必要があります。

 なお、理由のない面会制限は違法という判例がありますが、児相は「理由」をでっち上げるのが得意ですし、裁判所も児相の味方なので、国賠訴訟で争っても勝つのは簡単ではありません。

  子ども虐待対応の手引き 第5章 一時保護


理由16.「援助ガイドライン」に「面会制限の解除は保護者の指導を受ける態度を勘案する」と書かれていること
 厚生労働省が作成した文書「児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン」に、面会通信制限の解除の規準について次の記載があります。

 『児童福祉司指導措置等の効果を勘案して、面会・通信の制限、接近禁止命令が行われている場合には、保護者の指導を受ける態度を勘案して面会・通信の制限の解除、接近禁止命令の取消しを検討する。』

 理由15で、保護者が児相に敵対し指導に応じない場合は面会通信を制限されてしまう危険があることを説明しましたが、面会通信の制限の解除についても、「保護者の指導を受ける態度を勘案する」ということが児相の運用マニュアルで定められています。

 保護者が指導に応じなければ面会通信制限が行われ、その後も保護者が指導に応じなければその面会通信制限は解除されない、それが児相の運用です。

 上記の制限解除の判断基準に「虐待の程度を勘案する」とは書かれていないことにも注意してください。これに限らず、児相は、虐待の程度ではなく、保護者の指導を受ける態度に基づいて判断をしています。児相と敵対し指導を拒否した結果、虐待の程度に関係なしに面会通信制限を課され、何年もそれが解除されないということが現実に起きています。

  児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン


理由17.「援助ガイドライン」で「家庭復帰」になるのは「指導を受け問題が改善」のときだけであること
 厚生労働省が作成した文書「児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン」に3つの図がありますが、いずれも「援助の終結・家庭復帰」に至る道は「指導を受け問題が改善」のみです。

 具体的に見てみると、「図1保護者援助の全体イメージ」では、「指導を受け問題が改善」のみが「援助の終結・家庭復帰」に至りますが、それ以外はすべて「援助の継続→他の措置を検討」になります。特に「指導を受けようとしない」は直接的に「他の措置を検討」となっていて、保護者が指導を受けないと措置の検討の段階に移ってしまうことが分かります。

 「図2在宅における保護者援助のイメージ」も同様に、「指導を受け問題が改善」のみが「援助の終結」に至り、それ以外はすべて「援助の継続→他の措置を検討」です。「指導を受けようとしない」は直接的に「他の措置を検討」となるのも同じです。在宅援助における「他の措置」とは、一時保護やその後の施設入所です。

 「図3児童福祉施設入所措置等における保護者援助のイメージ」も同様です。「指導を受け問題が改善」のみが「家庭復帰」に至り、それ以外はすべて「援助の継続→他の措置を検討」です。「指導を受けようとしない」が直接的に「他の措置を検討」となるのも同じです。この図は既に施設入所している場合なので、「他の措置」とは面会通信禁止、接近禁止、親権停止などになります。

 このように、在宅援助、一時保護、施設入所等、どの段階においても、児相の関与が終わるのは「指導を受け問題が改善」のケースのみです。それ以外は漏れなく「援助の継続」であり、そして「他の措置を検討」に進むようになっています。「他の措置」は上記のとおり、一時保護、施設入所、面会通信禁止、接近禁止、親権停止等であり、親子断絶されてしまいます。

 「保護者は指導を拒否しているが、子供の家庭復帰を許可する」という道筋は、ガイドライン上には、存在しません。児相の指導を拒否すると親子断絶に向かうので、危険です。

  児童虐待を行った保護者に対する援助ガイドライン


理由18.児相職員の「虐待の程度関係なく折り合いがつかなければ28条審判を申し立てる」との発言
 多くの根拠が示すとおり児相の運用は原則「保護者が指導に従わなければ施設入所」です。これを一番よく知っているのは、実際にこの運用方針に基づいて子供を施設に入れている児相職員たちです。

 以下はある児相職員の実際の発言です(録音あり。発言の趣旨が変わらない範囲で調整しています)。

 児相職員『お父さんは、たぶん、虐待がすごい酷いレベルだと児相が家裁に施設入所の申し立てをする、って思ってらっしゃる。そうじゃないんですよ。親御さんとこう話し合っていっても、なかなか折り合いがつかないことってあります。虐待の程度関係なく、司法に正しい判断を求める段には、手法として施設入所の申し立てをします。』

 この児相職員は、①虐待の程度関係なく、②児相と保護者の折り合いがつかなければ、③28条審判を申し立てる、と述べています。これは「虐待の程度とは無関係に、指導に従わないなら、子供を施設に入れる」ということです。実際、児相の運用マニュアル上、保護者が指導に従わないなら児相は子供を家庭復帰させることができないので、28条審判を申し立てるしかありません。児相職員の上記の発言は、児相の運用を事実として述べているだけです。児相児相の運用マニュアルに従って実際にこういう運用をしているのです。

 児相は、保護者が指導に従わなければ、家庭裁判所に28条審判を申し立てます。児相はその申立書で、「保護者が指導に従わない」ことを根拠に児童の施設入所が必要だと主張します。もちろんそれだけではなく、児相は審判に勝つために、申立書で保護者の悪口を大量に書き連ねます。家庭裁判所は基本的に児相の判断を採用し、9割以上は児相が勝ち、子供は施設入所になってしまいます。


理由19. 親が指導に従わないと児相は「安全を確保する」という名目で子供を施設入所させること
 児相が行うべき業務は児童福祉法によって定められています。その中に「児童の一時保護を行う」と「一時保護の解除後の児童の安全を確保する」という業務があります(児童福祉法11条1項2号ホ、ヘ)。

 この規定により、児相の業務は「一時保護」では終わらず、「安全を確保してから一時保護を解除する」までがセットになっています。これは法律で規定されていることなので、児相は「安全を確保しないで、一時保護を解除する」ということは法的にできない、ということになります。

 同条文(児童福祉法11条1項2号ヘ)には「安全を確保する」の方法が明記されています。その内容は『家庭その他の環境の調整、当該児童の状況の把握その他の措置により当該児童の安全を確保する』です。保護者が児相に敵対して指導を拒否すると、児相はこの条文で規定されている「家庭その他の環境の調整」ができないことから、「その他の措置」によって「安全を確保する」法的義務が生じることになります。「その他の措置」とは、施設入所、面会通信禁止、接近禁止、親権停止等です。

 児相は、施設入所等のこれらの措置を採るにあたって、「安全を確保するという法的義務を果たすため」という大義名分を持っているのです。

 児相は「家庭その他の環境の調整」が不調に終わればそれを理由に「安全を確保する」という名目で子供を施設に入れてしまいます。28条審判児相が「保護者が指導に従わないので安全を確保できない」と主張したとき、保護者が「指導に従わなくても安全を確保できている」ということを立証し児相の判断を覆すのは難しいです。

 一時保護を解除するためには、保護者が「家庭その他の環境の調整」に応じる必要があります。児相に敵対し指導を拒否すると、児相に「親子断絶する法的根拠」を与えることになり、危険です。


理由20.親が児相に敵対することを選択し親子断絶されてしまった過去の事例
 一時保護後に親が児相に敵対し争う立場をとり、その結果一度も親子の面会が許可されない完全な親子断絶となった著名な事例がありますので紹介します(著名な事例ですが仮名としました)。

・ 体罰を虐待と認めず親子断絶された事例

 MS氏(仮名)の息子さんが小学校1年生、6歳のときに一時保護。体に複数のアザあり。学校の教師からの体罰でついたアザ等もあったが、アザの1つはMS氏による体罰でできたものとMS氏が認めた。児相はこれを虐待と判断したが、MS氏は体罰は懲戒権の行使で適法であり、躾の一環であって虐待ではないと主張(当時は親の懲戒権が認めれていて、体罰は違法ではありませんでした)。児相はMS氏の主張を問題視し、一時保護後に一度もMS氏と子の面会を許可せず、完全な親子断絶を行った。MS氏は国賠訴訟を提起(MS氏によると児相の親子断絶の違法性を争う国内で最初の訴訟とのこと)。一審棄却、二審棄却、最高裁まで争ったが棄却され、敗訴が確定。親子断絶が継続した。一時保護された息子さんは職員に対し「家に帰りたい」と泣いて頼んだという記録が残っていたが、裁判所は子供の気持ちよりも児相の判断を優先した。「親が虐待を認めないことによる完全なる親子断絶」は「違法ではない」という司法判断が行われた最初の事例となった。

・ 虐待事実がないのに親子断絶されたケース

 MO氏(仮名)の息子さんが9歳のときに一時保護。体に複数のアザあり。それらは学校の教師からの体罰等でついたアザであり、MO氏の体罰は確認できなかった。MO氏は児相からの指導に応じず、人権侵害、条約違反、行政手続き違反等を主張。児相一時保護後に一度もMO氏と子の面会を許可せず、完全な親子断絶を行った。MO氏は、緊急性がないのに親の同意なく一時保護したことを違法であるとして行政訴訟で争ったが、敗訴。児相は子供を施設入所させようと28条審判を申し立て。裁判所は、MO氏による体罰や虐待等の事実が認められていないにも関わらず、施設入所を承認。以降、息子さんが18歳になって施設を退所するまで9年間、あらゆる親子の交流が禁止される完全な親子断絶が継続。MS氏のケースに続き、「親が指導に応じないことによる完全なる親子断絶」は「違法ではない」という司法判断が行われた事例となった。

 2つともネットや書籍等で詳細を確認することができる事例です。当時はまだ児相に対する訴訟の判例が少なく、訴訟によって子供を奪還できる可能性がありました。しかしこれらの事例(判例)により、訴訟によって子供を奪還することが難しいことが判明する結果となっています。

 これらの過去の事例から学べるのは、児相と敵対すると厳しい親子断絶を受ける危険があること、裁判所がその親子断絶を認めていること、です。過剰保護や誤認保護などの不当な一時保護を受けたとき、児相の指導に応じずに怒りをあらわに児相と対決しても、子供を助けることはできません。これらの事例は、子供の救出を優先するならば、第一に児相の指導に応じるべきであることを教えてくれています。

 ※児相と闘う道を選択したMS氏、MO氏ら先達の方々の決断を批判する意図は一切ありません。


理由21.28条審判で施設入所になったあと指導に従わないと施設入所がいつまでも延長されてしまうこと
 児相が保護者の意思に反して子供を施設入所させる場合、家庭裁判所で「28条審判」が行われ、承認されると子供は強制的に施設入所になります。この審判は「28条審判」と呼ばれていますが、 正確には「児童福祉法28条1項の承認の審判」で、この審判の結果として行われる施設入所措置は「児童福祉法28条2項」により「2年」という期間が設けられています。

 それでは「2年」経てば子供が施設から帰ってくるのかというと、そうではありません。同じ「児童福祉法28条2項」では次のように再度の審判を経て期間の延長ができると定められています。

 『当該措置に係る保護者に対する指導措置の効果等に照らし、当該措置を継続しなければ保護者がその児童を虐待し、著しくその監護を怠り、その他著しく当該児童の福祉を害するおそれがあると認めるときは、都道府県は、家庭裁判所の承認を得て、当該期間を更新することができる。』

 ここに「保護者に対する指導措置の効果等に照らし」とあることに注目してください。施設入所後も、保護者が児相からの指導を拒否した場合、「指導の効果がない」ことから、自動的に施設入所の延長が認められてしまいます。それが子供が成人して施設を退所するまで繰り返されてしまいます。

 子供の施設入所措置を解除するためには、保護者が児相の指導に従い、効果があったことを示さなければなりません。子供を家庭復帰させるのは保護者が指導に従って問題が改善されたときのみというのは、児相のガイドライン等にも記載されていることですが、そういったガイドラインにはこのように法律による裏付けがあるのです。

 具体的に考えてみると、施設入所を延長できるのは「……おそれがあると認めるとき」ですが、これは施設入所を決定する最初の「28条審判」と同じ文言なので、28条審判を経て施設入所になってしまった時点でこの「……おそれがあると認める」は成立してしまっています。よって施設入所の延長を防ぐには、「過去にはそのおそれがあると認められたが、指導の効果により、今はそのおそれがない」ということを示す必要があります。つまり、施設から子供を救い出すには、児相の指導に従い、その効果によって「児童の福祉を害するおそれがない」状態へと問題が改善されている必要があります。保護者が児相の指導に従ったこと、問題が改善されたことの証拠を確保できれば、2年に一度の延長の審判で、「指導の効果により問題は改善されたから延長の必要はない」と主張し争うことが可能になります。

  児童福祉法28条2項


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